新着本のご紹介(2023年3月)

本屋百々  2023年04月02日

こんにちは。本屋百々の店主、牧野です。

2023年3月に新しくオンラインストアにアップした本を、まとめてご紹介します。

章説-トキワ荘の青春 / 石ノ森 章太郎

いまの世の中、のんびりすることが見直されている気がします。効率や生産性は、「こんなこと、やってみたいな」を許してくれません。
早くやること、一度にたくさんやること、「結果」を出すこと。この三拍子揃っていることが、いい社会人であり、「デキるやつ」の条件である。誰に言われたのかわからないけれど、いつの間にかそう思い込んで働いていたのが、会社員だった頃の僕。今にして思えば、僕は、自分とは真反対の性質に憧れ、それになろうとしていました。その結果、僕の頭には十円ハゲができたのでした。

この本に出てくるように、トキワ荘の住人たちが「のんびり」していたというのであれば、彼らが生み出した作品たちの素晴らしさが、「のんびり」の大切さを物語ってくれているのではないでしょうか。
のんびりっていうのは、効率とか生産性という言葉とは別の世界の話。僕の5歳の娘は、毎日お絵描きに夢中だし、すごいスピードであやとりをマスターしていきますが、効率とか生産性を意識しているようには全く見えません。マイペースで、よく道草をするし、だいたいご機嫌です。彼女を見ていると、もっとのんびり生きようと、たびたび思わされるのです。

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33の悩みと答えの深い森。ほぼ日「はたらきたい展。2」の本 / 奥野武範(ほぼ日刊イトイ新聞)

ほぼ日のコンテンツ、特にインタビュー形式のコンテンツは、自分のことに重ねながら読めるところがいいなあ、と昔から思っている。何かの答えをもらうというよりは、そこで繰り広げられている対話を聞きながら(実際は読みながらだけど)、同時並行で第3の世界が立ち上がってきて、その中で今の僕と、新しい僕との対話が始まったりする。そして、普段の生活の中で着込んでいた色んなものを脱ぎ捨てて、身軽で素直な自分になっていく。その素直な自分が、「ねえ、こうしてみない?」と投げかけ始める。あとはそれに従うだけだ。

この本は、はたらくことに関する33の質問に、33人の著名人たちが答えている本だ。
正直、ピンとこないものもあるし、たった数年前の本なのに、すでにズレを感じる内容もあったりはするけれど、思わず手帳にメモを残した言葉もあったりする。というか、それが普通のことなのかもしれない。世の中には様々な人がそれぞれの考え方で生きていて、はたらいているわけであって、そもそもこのような本を読んでいる僕もまた、数ある様々なうちの一つなのだから、全部に共感したりすることはあり得ない。
33通りの言葉の中から「あっ!」と思えるような、次の一歩へ背中を押してくれるような言葉が見つかる本だと思います。

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小さき者たちの / 松村圭一郎

文化人類学者の松村圭一郎さんが、故郷・熊本の、ふつうの人々が経験してきた歴史を掘り下げ、まとめた一冊です。
僕は本屋さんでこの本と出会い、冒頭の次の書き出しを読んで、すぐに買うことを決めました。

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これまでの事業の信用あればこそ、人さまが名を重うしてくるる。
我がふところは損をしても、事業の恥はぜったいに残しとらん。
人は一代名は末代、信用仕事じゃこれは
(石牟礼道子『椿の海の樹』河出文庫 216ページ)

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明るく、希望の光のようなこの言葉は、その後に続く「水俣病」に関する、心を締めつけられるような記述を読み進める中で、松明のような、お守りのような役割を担っていると感じます。

小学校で習った「公害病」としての水俣病が、大人になった今、全く違う意味を含んでいることに、本書を通じて気づかされました。
そして、水俣病は決して終わった過去のものではなく、今も続いているのだということも。

この本は、決して、苦しく思いだけの本ではありません。
「人の尊厳とは何か」という問いに、真正面から人生をかけて応えようとしてきた人たちの、愛の記録でもあると思うのです。

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お知らせ:5/13(土) 大磯ブックマルシェに出店します

5月に、神奈川県大磯町で開かれる「大磯ブックマルシェ」に、本屋百々が出店参加することが決まりました。
当日は、普段オンラインストアにアップしていない本も販売する予定です。
お近くの方は、お時間あればお立ち寄りいただけたらうれしいです。

▼OISO BOOK MARCHE 公式HP
https://oiso-book-marche.jimdosite.com/

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