【試し読み】エッセイ・短歌集『ダメな僕のままで』

書籍

このページでは、エッセイ・短歌集『ダメな僕のままで』の、試し読みをおたのしみいただけます。
本書の中から、「はじめに」と「みんながいてくれてよかった。」を公開します。

はじめに

子育てと日々ページ

娘が通う幼稚園は、門をくぐると、
生い茂った木々が出迎えてくれる。
この木々は、何年にもわたって、
たくさんの親子の声を聞いてきたのだろう。

行きたくないとぐずる子どもの声。
急かす親の声。
笑う声。泣く声。なだめる声。

美しい声も、そうでない声も、
受け止め、見守りつづけてきたのだろう。

やりきれない気持ちになったとき、
この木々を見上げると、
「なんとかなるよ」と言われているような気がする。

みんながいてくれてよかった。

奥さんの誕生日が近く、5 歳の長女がせっせとお祝いの準備を進めている。

毎日のように「あと 〇〇にち ねたら、おたんじょうびだよ。たのしみにしててね。」と奥さんに言う。今日も「とくべつなおてがみ」を一緒に書いた。こないだも、そのまた前にも書いていたはずだが、今日のはまた「とくべつ」なのだそうだ。娘の本棚の一角に、お手紙が束を成している。

僕のスマホには「みてね」という写真アプリが入っていて、「何年前の今日」の写真や動画が通知される仕組みになっている。
3年前の今日は、娘が覚えたてのジャンプを披露してくれていた。動画で再生すると、本当に少しだけ地面から浮いた跳躍をしている娘の姿。「わ〜!すごいね!そんなことができるようになったんだね!」という僕自身の声。その感じから、本当に感心して喜んでいるようなので、この時期までジャンプできなかったのだろう。

今ではもう、「からだ☆ダンダン」に合わせてピョンピョン跳ねるし、スキップも上手にできる。平仮名も書けて、ハートとお花の絵も添えたお手紙だって書ける。内緒話をして、奥さんの誕生日プレゼントを一緒に選ぶことだってできる。

2016年の奥さんのお誕生日は、僕一人でお祝いをしていた。僕ができるだけの気持ちを込めて、ケーキを作ったり、風船をふくらませたり、メッセージカードを添えてプレゼントを用意したりしていた。

今年は、長女が一緒に準備をしてくれている。僕一人でお祝いしているときよりも、ずっと柔らかで色とりどりのやり方で。
ハイハイできるようになったばかりの次女も、ニコニコしたり、奇声をあげたりして笑わせてくれる。

みんながいてくれてよかったな、と思う。みんなでお祝いできて、本当にうれしい。

本書について

『ダメな僕のままで』

製本:ホチキス中綴じ
サイズ:B6 32ページ
価格:660円(税込)

発行日:2023年5月19日
著者:牧野 彰邦
編集:牧野 彰邦
発行:GOOD&SHARE

著者プロフィール

牧野 彰邦(まきの・てるくに)
1985年福井県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。2019年4月GOOD&SHAREを立ち上げ。
「人生は、グッドなことで、あふれてる。」をテーマに、ふれると心があったかくなるようなコンテンツづくりをしている。主なコンテンツに「ほめほめノート」「ほめほめカード」「ひとこと添えられるシール」「キャリアブレスト」など。オンライン書店「本屋百々」も運営。二児の父。

ご購入はこちら