ヨセミテ国立公園でのトレッキング

平日更新の『いいことメガネ』。
木曜日のテーマは、「ドキドキした話」です。


あれは初めてカリフォルニア州・ヨセミテ国立公園に行ったときのこと。

自然あふれる広い国立公園のなかをトレッキングできることを知り、僕と奥さんは絶景ポイントの丘の上まで歩いてみることにしました。

多くの観光客がバスで行くような距離で、片道6時間はかかります。
それでも、せっかく来たのだからと、チャレンジしてみることにしました。
幸いトレッキングシューズ、レインウェアなど、トレッキングに最低限必要な道具を持ってきていたので、食べ物だけ揃え、翌朝トレッキングを開始しました。

と言っても、僕はトレッキング自体が初めて。
日本国内ですらやったことがありません。体力が持つか、嫌にならないか少々の不安もありましたが、それよりも好奇心のほうが圧倒的に勝っていました。

トレッキングコースは、自然を壊さないよう最低限の整備しかされていません。
滝のすぐ脇の急斜面の岩肌をスリップしそうになりながら登ったり、自分の顔ほどの松ぼっくりが落ちている巨大な松林の中を倒木を越えながら進んだりと、大変だけれども新鮮なことばかりでした。

一番心配だったのは、クマとの遭遇でした。
ヨセミテ国立公園はグリズリーというクマが生息しています。
公園内では、クマが食べ物の匂いで寄ってこないよう、食べカスやパッケージもきちんと持ち替えるよう、厳重に注意されています。

トレッキング中にすれ違った他の旅行者から、「この先で、さっきクマがいたから気をつけてね」と言われたときは、ドキッとしました。しばらく注意して歩いていたのですが、あいにく霧が濃いエリアで、先方がよく見えません。熊鈴を持っていなかったので、手を叩きながら歩いていると、何やら黒い影が・・・。

ク、クマか・・・?
いや、・・・岩だ。

みたいなことが幾度とありました。
視界が開けるまでは、怖くて歩みも遅くなります。ノロノロと進み続けたあるとき、またまた前方に黒い物体が。また岩かな?と思っていたら、動くではありませんか!

今度こそクマか?!と思い、よーく目を凝らしてみると、なんと鹿。だけど、大きな角が頭に生えています。こ、こわい・・・。

向こうも怖くなってしまったのか、ピクリとも動きません。
けれどここは一本道なので、鹿が行ってくれないと僕たちは前に進めません。
「大丈夫だよ、行っていいよ。」などと声をかけても全く反応がないため、後退りして、木の陰に隠れることにしました。幸いしばらくしたらササッと逃げていってくれました。

ホッとした僕たちはまた頂上に向かって歩き始めましたが、しばらくドキドキがとまりませんでした。
怖かったけれど、自然の中を歩いているという実感もあり、とても貴重な経験をした気がしました。

ちなみに、天気があまりよくなかったせいで、苦労してたどり着いた頂上では、絶景を拝むことができませんでした。
「ああ、また来いということなのかな」と思ったのと、何よりトレッキング自体がとても楽しかったので、不思議と残念な気持ちはなりませんでした。結果より、過程やその瞬間瞬間を楽しむことが何よりなのだと、改めて思ったトレッキングのお話でした。

おしまい

 

いいことメガネについて

日々の暮らしのなかにある「いいこと」探しのエッセイシリーズ。
平日更新で、曜日ごとにテーマを設けてお届けします。

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木曜日:ドキドキした話
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