第3話 ある日、失業することになってしまった。
前回は「これまで、好きなことではなくお金や損得を優先していると、ピンチに直面する」という感覚についてお話しました。
今回は、僕が実際に経験したピンチについてお話していきましょう。
会社員だった頃
まずは、僕がまだ会社員だったころのお話です。
大学を卒業後、フリーター、そして商社での法人営業を経て、父親が経営する会社に入社します。2015年のことです。
父の会社は、地元・北陸にある食品メーカーで、東京を中心に大手食料品店、スーパーさまとお取引があり、東京に住んでいた僕が、首都圏の営業を担当することになりました。会社で唯一のリモートワーカーでした。
その後、僕の引っ越しや、会社の方針転換など、紆余曲折あり、設立当初から事業の軸であった、個人通販の部署に異動することになります。それをきっかけに、僕は独学でプログラミングを学び始めます。簡単なサイト制作なら一人で行えるようになり、このスキルが後々役に立ってきます。
さて、僕はリモートワークになったこともあり、この頃は比較的、時間を自由に使えるようになっていきました。金銭的にも余裕があった頃です。
ところが、そんな僕に、あるピンチが訪れます。
会社員からの失業
僕は、ある日を境に、失業することになってしまったのです。
入社してから数年の間に、会社はどんどん成長していきました。時代の流行の後押しもあり、販売数がどんどん伸びていたのです。生産量を上げるため、工場を新設し、ファンドからの投資も受け、従業員数も増え続けていきました。
しかし、もともとは地方にある、ファミリー経営の小さな会社です。会社の成長スピードに、中身が追いつけていなかったのです。僕自身、会社のありかたについて、父と衝突することも増えていきました。
そんな状況の中、ある大手企業さまとご縁があり、会社を株式譲渡することが決まります。会社の成長を考えれば、それが一番ハッピーなことでした。
しかし、僕個人としては、少し困ったことになりました。会社を売却するということは、役員が総入れ替えになります。当時、名ばかりではありますが役員に名を連ねていた僕は「退職」が必須条件になるのです。
当時、娘が1歳だったこともあり、僕は焦りました。お金の心配もあるので、すぐに職探しを始めましたが、インサイダー取引の関係で、公には内容を言えないままの転職活動をしなくてはいけませんでした。
転職サイトにも登録しましたが、転職理由を正直に伝えられないというのは、すごくやりづらかったです。「父の会社から退職する」と言うと、人によっては責任ある立場を投げ出した身勝手なやつと思われてしまいます。印象としてはマイナスです。採用側や転職エージェントからすれば、転職理由、前職の退社理由は非常に重要なはずです。
僕は、仕事自体が嫌になったわけではないので、本来転職する理由などありません。しかし、本当のことは言えない。
転職活動に力を入れきれないまま、時間は過ぎていきました。
そして2019年2月、会社が正式に譲渡されるのと同時に、僕は職を失いました。
役員だった僕は、一般社員と違って、失業保険もありませんでした。
その日を境に、収入が0になってしまったのです。
次回へ続く
連載:「怖くても、好きなことをやろう。」